日本昔話し

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日本の昔からある物語といえば、
『桃太郎』『かぐや姫』『一寸法師』……などがあります。

この3作の共通点は、
子供のいないお爺さんとお婆さんの二人住まいの家庭に子供(赤ちゃん)がやって来て、
二人に育てられる。

話の主役は、タイトルのとおり
育てられた子供達です。

お爺さんお婆さんは、子供が登場する迄は
山へ行ったり川へ行ったり裏の竹やぶへ行ったりの活躍をします。
子供が育ち、キャラクターが立ってくると
お爺さんとお婆さんはもう
ただの親で、わき役に等しい。

《ただの親》というのも弱冠ヒドイ言い方だけど、
子供が主役なので親の存在感は薄まる。

例え効率良くシバを刈ろうが、
料理上手で美味しいきび団子を作ろうが、
そこに人々が感銘される事は無い。。。。

お爺さんお婆さんの見せ所の最高潮は、
物語の冒頭。
むか~しむかし、あるところに、
お爺さんとお婆さんが住んでいるいました
……の所でしょう。

役名の「お爺さん」「お婆さん」と紹介されますが
毎回、大切に育てた子供達に主役を奪われます。

まあ、子供向けなので
酸いも甘いも噛み分けてきた大人の機微を織り込んだ人間描写の物語は、
好まれないかも知れません。

でも、親としてでは無く
ひとりの男(何かカッコいい言い方だけど)として
登場する、主役を張る
昔話しのお爺さんはいますね。

『花咲じいさん』とか『こぶ取りじいさん』がそれです。

でもこの場合、別に
お爺さんじゃなくても通じるお話ですね。

では一方、お婆さんはどうでしょうか?

私の思うお婆さんが主役……というか、
キャラが立っているお話は
『舌切りスズメ』です。

あくまでストーリーは私の記憶に基づき、
解釈も私の独自のものであります。

タイトルが『舌切りスズメ』とありながらも、
スズメは主役に有らず。
お爺さんとお婆さんも登場し、
この三役が三様のキャラである事で成り立っているお話です。

そして、このお婆さんこそが主役と
私が思う所以は、
お婆さんが《悪いお婆さん》……つまり、
悪役として描かれているからです。

主役・正義に対して敵役・犯人。
刑事ドラマや戦隊ヒーローものでも、
主役はレギュラーの役者。
でも、その主役をカッコ良くさせているのは
悪役であります。

例えば子供の好きなウルトラマン
でも、ウルトラマン同様、
毎回登場する様々な悪い怪獣も人気です。

ミステリーも、
犯人にバリエーションや魅力が有るから
面白いワケです。

だから悪役とは第二の(ある意味本当の)主役なのです。

そして『舌切りスズメ』の悪役は
お婆さんです。

お話は、こんな感じです。

昔、昔。あるところに、
お爺さんとお婆さんが住んでいました。

ある時お婆さんが、
庭でノリを干していました。
そこへ1羽のスズメがやって来て、
そのノリを食べてしまいました。
怒ったお婆さんが、そのスズメの舌を
ハサミで切ってしまいました。

お爺さんは、
傷を負ったスズメを可愛そうに思い
………………確か…………手当てしてあげた。
と記憶してます。

それで、スズメはお礼に
お爺さんを《スズメのお宿》やらに
招待します。
……この辺は何だか『浦島太郎』的です。

《スズメのお宿》で、
お爺さんは大層なもてなしをうけます。

綺麗な着物で着飾った
可愛いスズメ達が舞い踊り。。。。
……これも『浦島太郎』の竜宮城の様です。

たっぷり楽しんだお爺さんは
帰りしな、お土産に葛籠(つづら)を貰います。
……コレまた『浦島太郎』の玉手箱を思わせます。

このお土産の部分で、
何だかいきなりレジャー感が出ます。
スズメはすんなりとお土産をあげるのでは無く、
大小ある二つの葛籠のうち、
「好きな方の一つをどうぞ」というわけです。

お爺さんは小さい方を貰って帰りました。

家で葛籠を開けると、
…………確か…………金銀財宝だか、
とにかくキレイでステキなものが一杯
入っていました。

お爺さんから話を聞いたお婆さんは、
「大きい葛籠ならもっとたくさん入っていたのに、
何で小さい方を選んだんだ」と、
怒りました。

そして、お婆さんは大きい葛籠を貰いに
《スズメのお宿》へ行きました。
…………そこでのやり取り部分に覚えが無いのですが、
お婆さんは大きい葛籠を貰って帰りました。

家でお婆さんが葛籠を開けると、
ヘビや虫、オバケといった恐いものが
一杯出てきました。

…………おしまい。

という事で、
《欲張るな》という教訓になっている様です。

私も子供の頃、
自分でも分からぬ違和感を持ちながらも
『小さい方が謙虚な感じだし』と
ある程度納得していました。

それから月日が流れ、数年前の事
大人になっていた(とっくになっていた)私は
『舌切りスズメ』の話をふと思い出しました。

そこで私は違和感が明確になりました。
それは、
『何だかお婆さんが悪者扱いされ過ぎている』
という同情でした。

お婆さんは、スズメの舌を切るという
残忍な暴行を起こしました。
でもそれは、スズメがノリを食べたからです。
スズメは泥棒です。

イヤイヤ、それでもお婆さんはやり過ぎです
という思いも確かに有ります。

ただ、スズメにしても
葛籠に恐いものを仕込んでいたのが、
中々に根性悪な感じが表れてます。

恐らく、
お爺さんに見せた葛籠には
大小どちらにも良い物が入っていて、
お婆さんの時は
どちらも悪い物が入っていたのでしょう。

それで、一番のワルは誰かというと
お爺さんだと私は思います。

そう言うと、
「お爺さんはスズメを手当てしただけだよ」と
反論が聞こえて来そうです。
その声の中には、
当のお爺さんの声もありそうです。
「スズメを助けたら、
お礼を返してくれたんです……」

そう。正にこのお爺さんは
こんな感じなのです!
分かっちゃ無いんです!

そもそもお婆さんは、
何故ノリを干していたのでしょう。
そしてお爺さんは何をしていたのでしょうか?

昔話を、現代に置き換えてみましょう。

《お爺さんお婆さん》というワケですから、
お爺さんは定年で仕事をリタイアしてます。
専業主婦のお婆さんには定年はありません。
毎日毎日、三度三度の食事の仕度を
しなければなりません。

お爺さんは呑気で、
お婆さんがセッセとノリを干していても
「手伝おうか?」何ていう気働きはありません。

ノリを干す……とは、
お婆さんが色々と家計をやりくりしている様子が
うかがえます。
自分よりも夫の体を思い、食事も工夫し、
自分のオシャレより夫の身なりを優先させている。
夫は、男として社会への体裁も有ると、
夫をたてているワケです。
結婚してからずっとです。

お婆さんは健気に生きています。
骨の折れるノリを干す作業を独りでやっと終えたと思ったら、
無作法者のスズメが何の断りも無く
平然とノリを食べている。

それで怒り心頭に発したお婆さんは、
スズメを傷つけてしまった。

この時、お爺さんは何をしたか?

怪我を負ったスズメを助けるのは良いが、
お婆さんへの気遣いが無いではないか?
お婆さんのメンタルも相当危ない状態であろう事に思いが及ば無いジイサンとは、何と無神経なのか。

お爺さんは、
スズメの窃盗罪よりも
お婆さんの傷害罪の方が重いと思い、
お婆さんは蔑ろにしてスズメに
取り入ろうとしたのだろか?

《スズメのお宿》に招かれた際、お爺さんが
「妻が謝罪したいと言っている」とスズメに言って、
又、お婆さんの事もなだめ、
「一緒にスズメに謝ろう」とでも言い、
お婆さんも連れて行って欲しかったと私は思う。

それにしても、
スズメは何物であるか?
又、《スズメのお宿》とは
如何なる処なのか?

スズメは、
勝手に他人様の敷地に入り込み
しかも、ノリまで食べたという傍若無人振り。

昭和の有名女優の一人に、
金持ちのお嬢様だった人がいる。
その女優は娘時代に外出した際、
欲しい物があったら
勝手に店から持っていったそうだ。

お金は、後からバアヤだかが
店に払いに行ったそうだ。
だから後に結婚する迄、
お金を払うという事をその女優は
知らなかったそうだ。

もしや、このスズメも
こんな風に超お嬢様だったという事だろうか?

地元の大地主の孫娘か何かで、
お爺さんお婆さんの敷地も
「ここら一帯はぜ~んぶ自分の土地だから」と、
勝手放題な考え方をしているのか?

《スズメのお宿》というのが
スズメの家の様だが、
高価な物が入った葛籠を
お爺さんにプレゼントするなど、
裕福な家だと思われる。

それにしても
着飾ったスズメ達が舞い踊る接待とは、
何か《歓楽街》的《お店》な感じもします。

お爺さんが小さな葛籠を選んだのも、
大きな葛籠を持って帰ったらお婆さんに
『何だか随分ご機嫌ですね。
楽しい接待を受けて来た様ですね』と
キレイなオネエサン達に取り囲まれ、
良い心持ちでいた事を勘繰られ無い為で、
「何だかこんな物よこしたよ。
小さいから体した物入って無いだろ」と
誤魔化したかったからでしょう。

でも、妻は気付いています。
全てお見通しと言っても良いです。

現代で言えば
「上司(取引先)に無理やり誘われたんだよ。
早く帰りたかったんだけどね。
付き合いだから仕方無くてサ。
あ~ぁくたびれたよ」という
常套句と同じなワケです。

そんな見え透いた言い訳を
今更ながらに言う夫に、
妻は失望しました。
「夫に愛を注いでも虚しい……」と。

それで妻は憂さ晴らしに
若いツバメを囲います。

《ツバメ》というのは、
年上の女性から寵愛される若い男性(愛人)
の事です。

オヤッ!?
《ツバメ》とは、
ホンに味な呼び名である。
《スズメ》の向こうを張ったのだろうか?


……それでは今日はこのへんで。
またブログでお会いしましょう✨

   夏の真昼

本日のBGM:松田聖子チェリーブラッサム

小説『フーガ遁走曲~白薔薇婦人が愛した庭~』
https://natsunomahiru.hatenablog.com
是非一度お読みください✨✨✨

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